ヌッ

適当

稲毛で飲んだ話

インターンに落ちた僕は稲毛駅行きの電車に乗っていた。
僕の最寄り駅から稲毛は二時間超かかる。インターンの面接は都心であったので、ついでに知り合いのツジの住む稲毛に遊びに行くことにしていた。

流体力学

彼は来週に院試がある。その試験はそこそこ厳しく、内部でも30%くらいは落ちるらしい。
本人はというと高専時代は主席だったこともあるのに大学ではあまり成績は芳しくないようだ。
そこで僕に勉強を教えることで理解を深めたいといった。科目は流体力学
流体力学といえば高専時代に苦しんだ友人が多くいるので難しい科目なんだなという認識しかなかった。
ツジはドトールで待つといった。ここ最近コイツはよく喫茶店を待ち合わせ場所にする。
喫茶店というと「高いコーヒーの店」という印象しかなかったが値段を高くすることで客の民度を保ってるんじゃないかと最近思った。
合流してから流体力学の授業を聞いた。まとめた資料を見て高専の頃の力学が電磁気学を思い出した。
全く知らない分野だけれど勉強すればなんとかなるかなぁというレベルだ。
恐らく物理学とはもう縁がない生活だろうが、こうして見ると少しだけやってみようかなという気になる。
けれど試験のような目標となるものが無いのでやっぱりしない。

午後六時過ぎから90分の授業。
ちょくちょく気になった点に茶々を入れたが、どうにもこうにも腹が減った。
一通り資料の範囲を終えたところで勉強を終え、居酒屋に行くことにした。

起業

ツジは事業をしたい、商いをしたいと言う。
そのアイデアを聞いてみたが全くグッと来ない。
一応今までに無いアイデアであるのでここでは伏せる。
彼は割りと本気らしく最近しつこくその話をしてくる。

ツ「……っつープログラムをお前に作って欲しいんだよ。」
僕「僕がやるのはwebアプリとかほうだしなぁ、出来なくはないと思うけど。」
ツ「一万、いや三万出す。」
僕「そういう相場もよく分からんのよな。」
ツ「やるとしたらどんくらい時間かかるよ?」
僕「んー…………一ヶ月?」
ツ「えーっ、じゃあ具体的に何時間かかるんだ。」
僕「全く想像がつかん……でもこういうの答えられないとマズイよなぁエンジニア的に。」
ツ「そうだよ!これからそういう場面もあるでしょ。」
僕「うん、まぁそのプログラム関連のことは調べてみるよ。」
ツ「おう。」

ツ「しっかしこれ良いアイデアだと思うんだけどなぁ、お前はなんか案ないの?」
僕「んー……ないな、だから俺はどっかに就きたいのよ。起業とか考えられない。」
ツ「別に俺も起業したいとかじゃなくて小さい事業をやりたいってだけなんだけどさ。」
僕「あ、そうなの?最近起業したいとか言ってる奴ら多いからそーいうのだと思ってたけど。
あいつら具体的にしたいことがあるんじゃなくて、誰かの下で働くの嫌だからって理由としか思えないんだよな。」
ツ「それはあるかもな。起業自体は誰でも出来るからな。」
僕「資本金は1円でもいいわけだしな。続けるのが難しいのに。んで良いアイデアは『何か面白いことがしたい!』って考えて思い浮かぶんじゃなくて、偶然パッと『ああいうことがしたいな』って思い浮かぶと思うんだよ。」
ツ「考えるのも良いと思うけどな。」
僕「いやー例えばさ、俺達が整備委員会で草むしりしてたときにさ、急に『パン一で草むしりしてえな』っていうノリになって実際にやったじゃん。ああいうことだと思うんだよ。」
ツ「すげえ懐かしいなそれ。えーでもお前もちょっと考えてみろよ。」
僕「……しいて言うなら今ブラック企業とか労働に関する問題があるから、それに関するものがいいかなーと思うけどね。具体的な案は無いんだけどさ。あと作るならwebアプリだな。」
ツ「webアプリとは。」
僕「まぁwebサイト的な。最近スマートフォン用のアプリとかも多いけど一々落としてからじゃないと使えないだろ?ユーザーからすればサクッとブラウザに見えた方が良いと思うんて。最近だとスマートフォンのブラウザからでも見やすいサイトは多いし。」
ツ「でもゲームとかキツイんじゃねえの?」
僕「それは流石にアプリに任せる!それとは別に専用ブラウザアプリとか使わんでもってことよ。」
ツ「ふ〜ん……」

コリントの信徒への手紙 13章

ツ「なんかカップルとか見たりすると木とか倒して潰したいみたいな気分になるんよ。」
僕「お前サイコパスかなんかか。」
ツ「ちげーよ!お前もそういう風にならん?」
僕「うーん、最近思ったのは……そういう恋愛したりするのは普遍的でよくあることじゃん?だから別に止めることとかは出来ないし俺が苦しみから逃れることは出来ない。」
ツ「お前そんな事考えてたのか……。お前コリントの信徒13章を知ってるか?」
僕「なんだよ突然、お前いつの間に新興宗教に……。」
ツ「そうじゃねえよ!映画の『愛のむきだし』見てたっけ?」
僕「そういや見よう見ようと思って見てないな。」
ツ「これ見てみろ。」

コリントの信徒への手紙 13章 ~ 愛のむきだし - YouTube

僕「……うーん、良いシーンなんだろうけどよく分からんゾイ。」
ツ「しょうがないな、俺が解説してやる。まぁ要するに愛こそが全てってことよ。」
僕「はぁ。」
ツ「俺が潔癖症なの知ってるよな?」
僕「そりゃあもう。」
ツ「こないだ大学で便所に行ったらよ、同じ研究室の奴が大をしていてな、でソイツ手を洗わずに出て行ったんだよ。」
僕「ウケる。」
ツ「でもこいつの価値観なんだから分かり合えないだろうなと。でもこいつはその手で研究室の色んなものに触ってるんだろうと。それでもう俺は研究室やめたいと思ったんだよ。」
僕「なるほどね。」
ツ「っていう愚痴を別の友達に話したらさ、その友達も愛のむきだしは見てたんだけど。それはツジの愛が足りないと。同じ研究室の奴を愛してしまえ。そしてそいつのウンコも愛せと。全く納得出来なかったけど。」
僕「居酒屋でウンコとか言うんじゃねえよ、飯食ってんだよ!」
ツ「いや、納得は出来なかったけれど!でもそういうことなんだ、愛が足りないんだよ。」
僕「……俺に愛が足りないと?」
ツ「そういうことだ。」
僕「うーん、俺は友達には幸せにはなって欲しいと思うしそこには愛はあると思うんよ。でも付き合ったとかヤったとかいう話を聞くとさ、あぁ何で俺はこんなにダメなんだろう、どうしていけばいいんだろうってなんだよね。」
ツ「えーということは。」
僕「自分を愛せ、ということか。」
ツ「そういうことだ。」
僕「頑張ろう。」

泣けるCM

ツ「俺泣ける動画が作りたいんだよ。」
僕「どういうのが作りたいん?なんか〜短編的な?」
ツ「まぁYouTubeとかに上がってるようなさ。」
僕「そういや大学の英語の授業で、英語の泣けるCMみたいの見させられたな。」
ツ「そんなんあるんか。まぁ同じようなもんだ。」

ツ「例えばさ、知ってるかな、お母さん……あっこれネタバレだ。」
僕「そのキーワードでネタバレなのかよ。」
ツ「まぁ見てみろよ。」

母の日の感動動画。365日24時間休みなしで働く仕事の面接とは? - YouTube

僕「途中で分かっちゃったけどさ、確かに面白いなこういうの。」
ツ「だろ?作ってみたいよなーこういうの。」
僕「お前感動してすぐ泣くよな。」
ツ「そうそう、涙腺弱くてすぐ泣く。そういうお前は泣かないよな、人の心がない。」
僕「いや俺も感動して泣きたいんて!でも今まで感動で泣いたことあるのは……合唱曲のBelieve聞いた時と、風味堂のLAST SONG聞いた時と、ドラえもんの映画で台風のフー子が出てくる奴。これだけだな……。」
ツ「ドラえもんの映画は絶対泣く。あれは感動する。俺は人が協力して何かを成し遂げるってのにグッとくるんだよ。」
僕「そういや言ってたね。」
ツ「とはいえ感動する奴ってのは中々案が出ないもんだなぁ……」

出会い目的のバイ

ツ「お前まず女友達を作れよ。」
僕「高専の時は……女友達はいたもん……。」
ツ「そうじゃなくて今会ったりする奴だよ。」
僕「大学来てからの女友達は……ゼロですね……。」
ツ「お前な〜!よし、じゃあ二週間以内女友達作れ。」
僕「いつもそういう期限付きの目標定めて一度も出来た試しねーんだよ!」
ツ「確かに……あ、そういえばインターン駄目だったんだろ?バイトやれよ。」
僕「あーそうだないい加減始めるか。」
ツ「よし、今だ!今どのバイトにするか決めよう!」
僕「うん。」
ツ「俺がオススメなのは……バリスタ系だ。」
僕「なんかコーヒーとか淹れる人?」
ツ「そんな感じ。まぁキッチンの方だから他のバイトと話す機会も多い。SUBWAYとかさ。」
僕「あっ俺SUBWAY好き!」
ツ「聞いてねーよ!」
僕「まぁでも俺料理やりたいキッチンの方が良いかも〜。」
ツ「じゃあそれも視野に入れて。あと服屋とかもいいかもな女性社員多いし。」
僕「おー。」
ツ「そこでファッションセンスも磨くと。」
僕「はぁ。」

キモオタファッション

僕「僕の今の格好はどうですかね……?」
(GAPのグレーTシャツ、半袖の淡いチェックシャツ、ジーパン)
ツ「うーん、シャツはボタン閉めた方がいいんじゃねえか?」
僕「そういうもんなのか。長袖チェックシャツでボタン閉めてると、もうキモオタって感じしねえか?工学部にありがちな。」
ツ「それは否定しないけど。でもそれがダサいのはチェックシャツが悪いんじゃなくてサイズがダボダボとかよれてるってのが問題だと思うんだよ。そんでシャツはボタンあけてれば良いんだろと思って変なTシャツの上に羽織ってる奴もキモいと思う。」
僕「……俺のことじゃねーか!」
ツ「とにかく服がよれてなくてサイズも合ってるものにするってのが重要なんだよ。ユニクロのチェックシャツとかだと丈が長いとかあるんじゃねえかな。」
僕「なるほどね。でも別にボタン開けてるのは良いと思うんだけどなぁ。」
ツ「実際に周りの人とか見てみろよ。割りとオシャレな人はばっちり閉めてるし、オタクとかオッサンだと開けてる人がいる。」
僕「マジかよ、そんな事思ったの一度もないぞ……。」
ツ「これからそういうの見てみろよ、実際そうだから。」
僕「うーん……。」



僕は翌日にジムの練習があり、ツジは風邪気味ということで僕は泊まらずに帰ることにした。
帰り、ツジが屈んだとき頭頂部少しマズイことに気がついた。
俺が指摘したところ自分も頭頂部を見せたところ少しヤバイらしい。
自分だとすぐには確認出来ないから冗談なのか本当かわからないが。
前に美容院行ったときにスタッフが「ハゲる前に結婚すればいーんすよ」と軽口を叩いていた。
一理あるが俺はそもそも結婚出来るかも危うい。
頭皮に不安を覚えつつ自宅へ向かう電車に乗った。